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オフィス効率化から始める!山崎文栄堂の「働き方改革説明会」

清家美奈

残業時間の削減が上手くいかない会社は、整理整頓が下手な会社かもしれません。
もし、一日一人60分書類を探すのに時間がかかっていて、20名の会社だったら、1年間で4320時間も消費していることになってしまいます!

書類やモノがすぐに探せる「ことの仕組み」と、いきいきと働ける「心の仕組み」で、オフィスを変化させ、残業時間の大幅カットに成功したオフィス用品通販事業を行う株式会社山崎文栄堂では、定期的に「働き方改革事業説明会」というオフィス見学会を開催しています。一般の方も参加できるということで今回編集部は見学会取材をお願いし、内容の一部を紹介させていただけることになりました。

残業月80時間&離職率50%を改善

離職率グラフ

山崎文栄堂の離職率の変化

山崎文栄堂は順調に業績を伸ばしているなか、2011年には社員の平均残業時間が月80時間を超え、離職率は50%以上に達しました。代表取締役社長の山﨑登さんは、この状況になった原因を以下のように話します。

「いくら社長が『会社の業績を伸ばすためにみんなで頑張ろう』と言っても、それだけで社員の働くモチベーションを維持はできません。業績のためにどんどん残業時間が増えていく。『疲れた・・・』という言葉も言えないような緊迫した会社の雰囲気。社員がどんどん辞めていく状況を変えるには作業効率を上げて、同時に社内コミュニケーションもアップする働き方改革を行わないと経営が維持できないと思いました。」

山崎文栄堂が改革を進めた結果、現在では離職率10%を切りました。それでは、どんなオフィス&働き方改革を進めていったのか事例紹介していきます。

徹底した整理整頓!効率的なオフィス

(1)文具の在庫切れを防止「文栄堂文具店」

文栄堂文具店

社内共有の文房具棚「文栄堂文具店』

以前は文房具を社員それぞれが所持していましたが、写真上の共有棚『文栄堂文具店』から必要なときだけ取り出して、使い終わったら元の引き出しに戻すルールに変更したそうです。
棚の引き出しのなかには「補充依頼カード」が入っていて、カードには最低在庫と発注単位が記入されています。

補充依頼

在庫が残り少なくなったら発注カード入れに補充依頼カードを!

文具を持ち出す人が最終在庫をチェックし、必要に応じて補充依頼をします。在庫切れになる前に発注するルールになっているので、「使いたいときに文房具がない!」と困ることがありません。
どこに何が入っているのかも引き出しの写真で分かりやすく、使いたい文房具を探す時間の削減にもなり、物をなくすことも減ったと言います。

(2)定期的に中身を交換する「個人ロッカー」

個人ロッカー

個人ロッカーもコンパクトに

山崎文栄堂では全社員に1つずつ、「個人ロッカー」を設けています。
基本的には書類以外のもの(自分の名刺のストックやひざ掛け、お昼用のレトルト食品など)を入れていて、3ヶ月に1回ロッカーの引越しを行う決まり。これにより定期的に不要なものを処分し、物をため込むことを防止しています。ロッカーのネームプレートはマグネットなので簡単に張り替えが可能。
個人の荷物を少なくする仕組みにしておくことで、いつも退社時には机の上に物がないフリーアドレスが実施できて、書類を置いたままにしないので情報漏洩防止にもなっていると言います。

(3)ホワイトボードで「経理の見える化」

経理のスケジュールボード

経理のスケジュールボード

山崎文栄堂では、経理の月間作業と年間作業をこのホワイトボードで全社員が見えるように掲示。
こうすることで月次にどのくらい時間がかかるのか、何日にどの作業をするのかを把握しやすくしているそうです。また項目ごとにマグネットの色分けをしていて、黄色が「月次の仕事」、オレンジが「月次以外の経理の仕事」、ピンクが「給与に関わる仕事」、青が「年間業務」、裏返して白色にすると「作業完了」という風に、作業内容も一目で分かりやすい表示。作業の見える化をすることで、仕事の抜けや漏れがないようしっかり管理できていると言います。

今月の作業確認

「今月作業のマグネット」を左側の月間表に移動して日程把握

マグネットの色分け

マグネットの色分けで分かりやすく

また山崎文栄堂では経理担当者を2~3年で交代するようにしていますが、このホワイトボードを活用することで担当になった人は誰でもすぐに作業スケジュールが立てられるようです。

(4)「差し立て板」で本日の業務管理

差し立て板

ポケットのなかのカードが今日中にやる作業

今日中にやるべき業務内容は、この『差し立て板』で管理しています。
朝礼のときに、今日の日付のポケットから「作業カード」を取り出して担当者を振り分け。担当者が急遽休むことになってもきちんと代理の人が行えるので、作業の抜けや引き継ぎ漏れが発生しません。

(5)書類ボックスで徹底管理

郵便物仕分け

郵便物はここで仕分け

黄色の書類ボックスは『メールボックス』といい、郵便物の仕分けとして使用しています。担当者が1階の郵便受けに届いた郵便物を回収し、会社の窓辺に並べられているメールボックスに宛名を見て仕分け。
以前はデスクの上に直接郵便物を配布していたのですが、出張している社員も多く、紛失することが時折あったそうです。

書類の仮置き用

青色は「書類の仮置き用」として

青色のボックスは『仕掛りボックス』といって、現在進行中の仕事の書類を仮置きするスペースとして全社員に1個ずつ支給されています。1案件について1クリアフォルダーでまとめてもらい、クリアフォルダーには案件タイトルを必ず記入するルールなので、書類もスピーディーに探せます。

書類の戻す位置

書類は元の場所に戻す仕組み

また社内書類の約99%は「共有書類」となっていて、どこの書庫のどの位置に戻すかも、位置表記を確認してルールを徹底しているそうです。

(6)「集中スペース」と「リラックススペース」

集中スペース

集中スペース

社内から特にリクエストが多かったのは、「集中して作業できるスペースを作ってほしい」という声だったと言います。
この『集中スペース』に入っている人がいたら、基本的に声をかけないのが決まり。背もたれも高く、見た目以上に周囲の視界や音も遮断されるので、企画書を作成するときなど作業効率がぐんと上がるそうです。社員の平均滞在時間は、およそ1時間くらい。

テント

テントのなかでミーティング

ここはおもに企画のアイデア出しや、お昼休憩のスペースとして利用されている『ベースキャンプ』。「オフィスだけどちょっとくつろげる空間」というコンセプトで作ったミーティングスペースです。
急に雨が降ったり晴れたりする山の天気のように、経営も時代とともに激しく変化していきます。そういう意味で登山と経営はよく似ていて、目標に向かう山道ルートやツールの準備など、選択肢がとてもたくさんあり作戦を練ることは大切。毎週金曜日には幹部がテントのなかに集まって、ざっくばらんに会社の未来について話し合うと言います。

昇降式デスク

人気の「昇降式デスク」

この『昇降式デスク』は、使用していいメンバーを曜日ごとに順番に回しているそうです。
経営幹部がデンマーク視察に行った際に、「国が昇降式デスク導入を補助している」と知り山崎文栄堂でも導入を決意。社員からもとても好評で、机の高さを変えることで気分転換になり集中力が長く続くとのこと。

経営者が変われば会社は変わる

山﨑登

代表取締役社長 山崎登さん

山崎文栄堂のように効率的で働きやすいオフィスに変えることができたら、残業時間を大幅カットできたこともうなずけますね。では最後に、山﨑社長にインタビューの時間をいただきましたのでいくつか質問をしてみたいと思います。

――働き方改革を行ううえで、一番の大切なことはなんだと思いますか?

会社の仕組みだけを整えても意味はありません。社員みんなの気持ちを大事にするという「心の部分」がなければ、働きやすい環境にはならないでしょう。そこで私たちは、コミュニケーションを大事にする会社になりたいと思いました。
例えば人の話を聞くときも、相づちを打つ人は話をしっかり聞いていて、じーっと動かずにしている人は真剣に聞いていないと思いがちですが、後者の人も実はしっかり話を聞いていて、自分の中で内容を落とし込めてから反応するタイプだったりします。
人それぞれ、リアクションの仕方も意見を出すスピードも違う。それなのに「ちゃんと聞いているの? ちゃんと意見を考えているの?」と言ってしまったら、コミュニケーションが成立しませんよね。
幸せな会社になるためには、一人ひとりの違いを認めてコミュニケーションしていかなくては実現しません。もともと私は初めて会う人とも打ち解けていくことも早いし、前向きな話し合いをすることもできる。それが「コミュニケーション能力」だと思っていたのですが、それが大きな間違いでした。私の「一方的なコミュニケーション」を改めていったことが、働き方改革の第一歩と言えるでしょう。

山崎文栄堂執務エリア

――コミュニケーションを改善して、どんな変化があらわれましたか?

社員たちが「やらされている感」ではなく、自発的に意見やアイデアを出すようになり、いろいろなことを創り出そうという雰囲気になっていきました。今日ご紹介した働き方改革も、社員みんなで試行錯誤して積み重ねてきたものです。
以前の私は「会社と社員のために、とにかく業績をあげる」という考えだけで経営をしていたところがあります。
私のある一言で「山崎文栄堂が嫌いになった」と言って会社を辞めた人間がいます。その社員に対して私は、『もっとみんなに感謝したほうがいいよ』と言っただけ。その一言で辞めていく気持ちが当時は本当に分からなかったのです。
しかし今だったら彼の気持ちが分かります。毎日気持ちがギリギリの状態で頑張っていたことが。
社員が辞めていくなかで、本当に一人ひとりの存在の大きさに私も気づいていきました。

――売上や業績だけでは働く幸せは測れないということですね。それでは、最後に山﨑さんの今後の目標を教えてください

日本は『2016年度世界幸福度ランキング』では53位でした。先進国でありながら、幸せを感じて生きている人があまりに少ない国です。
ちなみに、1位はデンマーク。私たちはまだまだ世界から学ぶことが多くあります。
国はすぐに変わりませんが、会社は経営者が変われば環境がすぐに変わります。私たちはこれからも定期的にデンマークの働き方を視察し勉強を続けて、こうした説明会でみなさんとシェアしていきたいと思っています。そして少しずつでも、幸せを感じながら働ける国に変えていきたいのが私の現在の目標です。

(株)山崎文栄堂
テーマ > 働き方改革 |
 業種 > サービス